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HIRO YANAGIMACHI Shoemaking Philosophy 職人心得

形の手前にあるもの、形の向こうにあるものを大切にする

美しい靴をつくり得るかどうかを決めるのは、
手先、指先の問題ではなく、それらを動かす心の有り様。
また、そのつくり手の心の有り様を支えているものは、その靴を求めたつかい手の気持ちに他ならない。
大切なものは、決まっていつも目には見えない。
形を輝かせるもの、その本質は、形の手前にあるものであり、形の向こうにあるものであることを忘れてはならない。

時間をかけ、手を惜しまず、一つ一つ積み上げる

結果は過程の断片に過ぎなく、正当な過程を経た結果は、やがて経験となる。
過程を伴わない結果は、言わば、他の借りものであったり、たまたま起きた事象に過ぎない。
何事も安易に結果を求めず、時間をかけ、手を惜しまず、一つ一つ積み上げる。
できないことができるように、わからないことがわかるようになるためには、それより他に方法はない。

課題に真摯に向き合い、未だ知るに至らぬものへ挑戦する

思った結果にならなかった時、それはまだ気づいていないものがあることを知らせている。
反対に、良好な結果が、まだ気づいていないことを素通りさせてしまうこともある。
知識を深め、技術を高めるチャンスは、思い通りにならなかった時にこそ訪れる。
それを真正面から受け止め、時間をかけて解き明かし自分のものとする、その積み重ねこそが経験と言える。

知識、技術を内に留めず、外へ伝える

今手にしている、靴づくりに関するほとんどのことは、先達より手渡されたものであり、
それより先に自身で積み上げたものはわずかでしかない。
わずかばかりの自身の知識や技術にこだわることなく、外へ伝えていくことを惜しんではならない。
そうすることで、不確かなものが確かになり、新しかったことは古くなり、
その先に進むことができる。

伝統を守り、破り、離れ、新たな靴づくりの体系を築く

伝統的な靴づくりの知識や技術、受け継がれた型の本質を理解することなしに、
それ以上のものを生み出すことはできない。
同時に、伝統を守るだけでは、変化する時代の要請に応え得る新しいものを生み出すこともできない。
目指すは、伝統を受け継ぎ、引き連れた先に、その型を破り、新たな靴づくりの体系を築くこと。
そのために不断の努力を重ねる。

靴づくりを通して自分を高め、周りを豊かにし、社会と繋がる

靴づくりの目的は、自分を高めること、周りを豊かにすること、
そしてなにより、社会と繋がること、すなわち、それを必要としてくれる人に満足を届けることにある。
美しく履きやすい靴も、またそれをつくる知識や技術も、そのための手段に過ぎない。
知識や技術にこだわるあまり、独りよがりの靴づくりに陥ってはならない。